MTHFR遺伝子

葉酸代謝の鍵を握る重要な遺伝子
あなたの健康に大きな影響を与える可能性のある遺伝子タイプ

MTHFR遺伝子詳細

目次

MTHFR遺伝子のはたらき

MTHFR遺伝子の役割

MTHFR遺伝子は体内の重要なプロセスを制御する
設計図のような役割を果たします

MTHFR遺伝子の基本知識

MTHFR(メチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素)遺伝子は、葉酸(ビタミンB9)を活性型に変換する酵素をコードする遺伝子です。

なぜMTHFR遺伝子が重要なのか?

MTHFR遺伝子により生成される酵素は、体内の数多くの重要なプロセスに関わっています。

MTHFR酵素が関与する主な体内プロセス

DNA合成のアイコン

DNAの合成と修復

遺伝子発現のアイコン

遺伝子発現の調節

アミノ酸が多い魚のアイコン

アミノ酸代謝

神経シナプスアイコン

神経伝達物質の合成

心血管のアイコン

心血管の健康

遺伝子多型とは、遺伝子の塩基配列のわずかな違い(バリエーション)のことを指します。
この違いによって、同じ遺伝子でも機能に差が生じることがあります。

MTHFR遺伝子の主な多型

スクロールできます
多型名遺伝子型酵素の活性率日本人の割合
C677TT
(rs1801133)
CC型(野生型)100%約40%
CT型(ヘテロ接合体)約65%約45%
TT型(ホモ接合体)約30%約15%
A1298C
(rs1801131)
AA型(野生型)100%約60%
AC型(ヘテロ接合体)約80%約35%
CC型(ホモ接合体)約60&約5%

MTHFR遺伝子変異があると、体内のさまざまな機能に影響を与える可能性があります。

特にTT型(ホモ接合体)の場合、その影響が大きいことが研究で示されています

①心血管系への影響

  • ホモシステイン値の上昇
  • 心血管疾患リスクの増加

②神経系への影響

  • 神経伝達物質の合成に影響
  • 妊娠中の神経管閉鎖障害リスク

③エネルギー代謝への影響

  • ミトコンドリア機能に影響
  • 疲労感や運動態勢への影響

主要な研究データ

MTHFR遺伝子別 酵素活性の低下率
CC型
100%
CT型
65%
TT型
30%
MTHFR遺伝子の発見

Frossi et al. 研究チームがMTHFR遺伝子のC677T多型を発見。TT型では酵素活性が30%に低下することを報告

心血管疾患との関連

Klerk et al. のメタ分析で、TT型は心血管疾患リスクが16%増加することを報告(40件の研究、n=11, 162)

メチル化葉酸の効果

Liew et al. の研究でメチル化葉酸(5-MTHF)が通常の葉酸よりTT型のホモシステイン低下効果が高いことが判明。

あなたの遺伝子タイプに合わせた対策

MTHFR遺伝子タイプによって効果的な対策が異なります。自分のタイプに合わせたアドバイスを確認しましょう。

CC型(通常型)- 酵素活性: 100%

  • サプリメント
    • 通常の葉酸サプリメントや葉酸強化食品で十分に効果が得られます
    • 推奨摂取量:一般的な葉酸の推奨量(成人で1日400μg)を目安に
    • 特別なメチル化葉酸サプリメントは必須ではありません
  • おすすめの併用栄養素
    • 葉酸の働きを助けるビタミンB12とB6を含むマルチビタミンも有効です
    • 特に妊娠を計画している女性は、葉酸と併せてこれらのB群ビタミンを摂取すると良いでしょう
  • 食事アドバイス
    • 葉酸を多く含む食品(ほうれん草、ブロッコリー、レバー、アボカドなど)を定期的に摂取
    • 全体的に栄養バランスの良い食事を心がけましょう
    • アルコールの過剰摂取は葉酸の吸収を妨げるため、適量を心がけてください
自分のMTHFR遺伝子タイプはどうやって調べられますか?

市販の遺伝子検査キットや医療機関での検査で調べられます。

唾液やほほの細胞を採取するだけで、数週間以内に結果が得られます。検査前にMTHFR遺伝子が含まれているか確認しましょう。

メチル化葉酸と普通の葉酸は何が違うのですか?

普通の葉酸は体内でMTHFR酵素により活性型に変換される必要がありますが、メチル化葉酸は既に活性化された形態です。MTHFR変異がある方は、この変換効率が低下するため、メチル化葉酸の方が効率的に利用できます。

MTHFR遺伝子の変異があると、どのような症状が出る可能性がありますか?

必ずしも症状が出るわけではありませんが、変異型では血中ホモシステイン値の上昇、慢性疲労、気分の変動などが報告されています。適切な栄養サポート(特にメチル化葉酸)によってリスクを軽減できる可能性があります。

MTHFR遺伝子検査の結果を医師に相談すべきですか?

特にTT型やCT型の結果が出た場合は相談をお勧めします。医師との相談で、関連する健康指標の検査や個別のアドバイスを得られます。可能であれば遺伝医学や栄養遺伝学に詳しい医師を選ぶと良いでしょう。

参考文献

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