FTO遺伝子
肥満や体脂肪蓄積に関連する重要な遺伝子
適切な運動習慣と食生活の改善によってリスクを克服可能
肥満や体脂肪蓄積に関連する重要な遺伝子
適切な運動習慣と食生活の改善によってリスクを克服可能
FTO遺伝子のはたらき
FTO遺伝子は食欲だけでなく生活習慣病にも関わっています
FTO遺伝子の基本知識
FTO遺伝子は「脂肪・肥満関連(Fat mass and obesity associated)遺伝子」の略称で、食欲調節や代謝に関わっています。
なぜFTO遺伝子が重要なのか?
FTO遺伝子は食欲ホルモンの分泌バランスを左右する重要な要素です。FTO遺伝子が正しく機能している場合は分泌バランスも適切に保たれます。
一方でFTO遺伝子に変異が起きると食欲ホルモンの異常が起こりやすくなり、食事後すぐに食欲を感じてしまうという特徴があります。
FTO遺伝子が関わる主な体内プロセス
食欲の調節
遺伝子発現
肥満・体重管理
生活習慣病
体脂肪量の決定
遺伝子多型とは、遺伝子の塩基配列のわずかな違いを指します。
この違いによって、同じ遺伝子でも機能に差が生じることがあります。
FTO遺伝子には複数の一塩基多型(SNP、遺伝子の中でもたった1か所の文字(塩基)が違う遺伝子)が存在しており、中でも最も研究されているのはrs9939609というSNPです。このSNPには、A(リスクアレル)とT(非リスクアレル)という2つのバリアント(変異)があり、個人はAA、AT、TTという3つの遺伝子型のどれかを持っています。
FTO遺伝子の主な多型
多型名 | 特徴 | 日本人の割合 | 世界平均割合 |
---|---|---|---|
TT(非リスク型) | 標準的な食欲調節機能 | 約80% | 約40% |
AT(中間型) | やや食欲調節機能が低下 | 約18% | 約45% |
AA(非リスク型) | 食欲調節機能の大幅な低下 | 約2% | 約15% |
FTO遺伝子は肥満や体脂肪蓄積に関連する重要な遺伝子で、特にAAホモ接合体を持つ人は肥満リスクが高くなります。
この遺伝子は食欲ホルモンであるグレリンの分泌に影響を与え、食欲調節や食品選択に関与していると考えられています。
①食欲と満腹感への影響
②代謝への影響
③運動効果への影響
FTO遺伝子に関する研究は近年急速に進展しています。例えばイギリスのユニヴァーシティカレッジ ロンドンなどの国際研究チームは、FTO遺伝子が肥満をもたらすメカニズムを脳機能イメージングを使って解明する研究に取り組んでいます。
日本でも武庫川女子大学の研究グループが、日本人女性を対象にFTO遺伝子多型と体脂肪蓄積、糖代謝異常の関連について研究を行っています。
FTO遺伝子タイプによって効果的な対策が異なります。自分のタイプに合わせたアドバイスを確認しましょう。
TT型(非リスク型)
TTホモ接合体の方は、FTO遺伝子由来の肥満リスクは低いグループに属します。しかし、他の遺伝的要因や環境要因による肥満リスクは存在するため、健康的な生活習慣の維持は重要です。
バランスの良い食事と適度な運動習慣を維持することで、長期的な健康維持が可能です。定期的な健康チェックを行い、体重や体脂肪率の変化に注意を払いましょう。
AT型(中間型)
ATヘテロ接合体の方は、中程度の肥満リスクを持っています。AAホモ接合体ほどではありませんが、食欲調節に一定の影響を受ける可能性があります。
このグループの方には、定期的な運動習慣の確立が重要です。最低でも週3日、30分以上の中強度の有酸素運動が推奨されます。また、筋力トレーニングを組み合わせることで、基礎代謝を上げる効果も期待できます。
食事については、規則正しい食事時間と適正な食事量の維持が大切です。特に間食の管理と夜遅い時間の食事を避けることで、体重管理がしやすくなります。
TT型(リスク型)
AAホモ接合体を持つ方は、最も肥満リスクが高いグループに属します。
定期的な運動は特に重要となり、1日1時間の運動を週5日実施することで遺伝的要因の影響を大幅に軽減できることが科学的に証明されています。ウォーキング、ジムでのトレーニング、自転車通勤など、日常生活に運動を取り入れる工夫が効果的です。
食事面では、食物繊維が豊富で低GI(グリセミック・インデックス)の食品を中心とした食事パターンが推奨されます。これにより、満腹感が持続しやすくなり、食欲ホルモンであるグレリンの分泌を適正に保つことができます。また、食事の記録をつけることで食事量を客観的に把握し、過食を防ぐ効果も期待できます。
唾液を採取するだけの簡単な検査で、肥満関連遺伝子とも呼ばれるFTO遺伝子のタイプ(AA型・AT型・TT型)がわかります。
この検査は医療機関や遺伝子検査サービスを提供する企業で受けることができますが、検査を受ける前には十分な遺伝カウンセリングを受けることが推奨されます。検査結果はおよそ2〜4週間で届きます。
確かにFTO遺伝子変異は肥満のリスクを70%上昇させます。ただ、遺伝子は運命ではなく、生活習慣で大きく影響を変えられます。
定期的な運動でFTO遺伝子の影響が最大27%軽減されるという研究結果があり、食事内容や睡眠の質も体重に大きく影響します。遺伝子タイプを知ることは対策の第一歩です。
家族で楽しく健康的な食事と運動習慣を作ることが効果的です。
厳しい食事制限よりもバランスの良い食事を一緒に楽しみ、外遊びやスポーツを家族の活動に取り入れましょう。子どもの体型に否定的な発言は避け、健康的な習慣に焦点を当てることが重要です。
はい、変わります。若年~中年期(20代~50代)はFTO遺伝子の影響が強く現れ、高齢期(65歳以上)になると影響が弱まる傾向があります。
ただし、どの年代でも適切な食事と運動習慣が体重管理の鍵です。